「ネイティブスピーカーの前置詞」という本が面白い

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「ネイティブスピーカーの英文法」シリーズ第2段、「ネイティブスピーカーの前置詞」という書籍を購入した。

ネイティブスピーカーの前置詞―ネイティブスピーカーの英文法〈2〉
ネイティブスピーカーの前置詞―ネイティブスピーカーの英文法〈2〉
大西 泰斗 (著), ポール マクベイ (著), Paul Chris McVay (原著)

元々はペパボのとしやさん(@hogemoge)が購入したことに触発されて買ってみたものだ。 としやさんはCodecademy1でRubyを勉強したと思えばRails Tutorial2を完走したり(職業的には元デザイナ、現マネージャという立場だ)、カリグラフィを学習したりプラモに熱中したり、趣味人としての側面と徹底的な側面を併せ持つユニークな人だ。

感想

意味は派生する、親と子は似る、しかし「家族」は似ていない

さて、本書では「家族の顔」という原理を用いて、前置詞への理解を深めていく。 顔というものは、親から子へ遺伝しがちな要素で、つまり「派生」を意味している。 親と子は似るもので、ある前置詞の1つの意味から新たに別の意味への派生が起こると、それはどこか共通項があったりする。

しかしながら、父と母が似ていないように、どちらかの親に強く似た子がいるように、「たった1つの共通項」で全てが結ばれるわけではない。 「単語と訳」を丸暗記するようでは脳みそが保たない。 「ある単語の用法全てに共通するイメージ」など存在しない。 代わりに、「中心的なイメージ」をベースとして、その派生的な意味との間の繋がりを見出そうとするのが本書の特徴のように思う。 想像力を鍛える、といってもいいかもしれない。

もう少し具体的に

例:about

もう少し話を具体的に落とし込もう。 本書に登場する前置詞の1つに「about」がある。 おそらくこの単語を見ると、「〜について」という「訳」が浮かんでしまわないだろうか。 あるいは「約・およそ」かもしれない。

しかし、最初に書いたように、「about = 〜について、約・およそ」と強く結び付けない、丸暗記しないことが大事だ。 本書は丸暗記を否定するところから始まっている。 重要なのは「中心的なイメージ」と連想的な「派生」だ。

基本イメージと派生

さて、「about」の基本イメージは「〜のまわりに」あるいは「周囲」だという。 人の周辺をぐるりと囲んだ何か、ぐらいをイメージするとよい。 この「周囲」というイメージから、「近くに」という意味が派生すると解説される。 これぐらいなら想像に難くないだろう。

更に「近く」というイメージから、「about to do = まさに〜しようとしている」といった派生も納得しうるものだろう。 「to do = なんらかの動作」に近い、つまりその動作がまさに起ころうとしている、というわけだ(と言いつつ、もう少し上手い説明が出来れば良いのだが)。

「たった1つの共通項」「ある単語の用法全てに共通するイメージ」が通用しないのは、このような「派生の派生」の存在も要因だろう。

補足

そういえば、「〜について」はどこから派生したのだろう。 それは「周囲」というイメージをベースに、本体からは距離を保つイメージが連想され、やがてその間接性から「そのものの周辺のアレやソレ=〜について」といった風に派生したのだろう。

本書にはイラストも多数掲載されているため、このような言葉による説明よりもイメージしやすいかもしれない。

終わりに

漢字の偏や旁から想像出来るものがあるように、また元々の言葉から新たな意味が生まれるように、英語の前置詞にもイメージと派生が存在する。 更に言えば、英単語も「語源」があり、「語源とイラストで一気に覚える英単語」シリーズで詳解されるように、単語は「接頭辞」「語根」「接尾辞」などに要素分解することが出来る。

膨大な単語学習にはやる気も萎えるものだが、こうして「中心的なイメージさえ覚えれば、あとは派生である程度はなんとかなる」といったような気持ちを持つことが出来れば、学習意欲も保つことが出来るのではないだろうか。 (少なくとも自分にはそれが好みである)

iPad miniと同じサイズで、160ページ程度の厚み、そして字も大きいしイラストも多いので、すぐ読み終わるだろう。 サイズの割に定価1400円とやや高い印象があるかもしれないが、内容の濃さを知れば十二分と感じるだろう。