時に猿マネ、時に無手勝流にスライドを作ってきたけど、いい加減「スライドの基本」を学ばないといけないなあと思ったので、「外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック」をサッと購入。
本書は、数値や概念・構造関係をグラフやチャートで表し、情報の視覚化されたスライドのサンプルを通して、スライドの作り方を学ぶ構成になっている。
良いメッセージの条件
「PART1 スライド作成の基本」では、スライドに必要な構成要素やレイアウトの基本ルール、各スライドのメッセージに必要な3つの条件など、1枚のスライドを作る上での基礎的な要素が散りばめられている。
メッセージとは、「何を言いたいのか」という1枚のスライドにおける主張であり、スライドの良し悪しはメッセージで決まる。 本書曰く、良いメッセージには3つの条件がある。
- 1スライド1メッセージとなっている
- 明快な主張がある (=ポジションを取っている)
- 短い (ポイントが明確である)
ここに書かれている条件は非常に分かりやすい。 1スライドに複数のメッセージが入っていれば、主張がブレるし、何より長大化して読みづらくなるのは自明であろう。 シンプルだが、重要な指標であると思う。
必要な情報量と “Surprising yet right”
「メッセージ」における3つの条件に加えて、「相手が何を知っていて、何を知らないか」、つまり必要な情報量とは何かを整理しなければならない。
本書に登場する “Surprising yet right” というフレーズは、タグボートのクリエイティブディレクター・岡康道氏の提唱する情報整理のフレームワークである。 このフレーズは「意外だけど言われてみれば納得できる」という意味で、これを分解すると「Surprising x Non-surprising」という軸と「Right x Wrong」という軸で象限を作ると、以下のような表になる。
表: 「*『外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック』 図85 相手との関係性によって必要な情報量は変わる*」を基に作成
| Non-surprising | Surprising
—— | ——————————————— | ————————————————- Right | 中程度の情報量が必要 (当たり前) | 少程度の情報量が必要 (意表をつくけど納得) Wrong | 大程度の情報量が必要 (陳腐なくせに違和感あり) | 中程度の情報量が必要 (目新しいことで違和感あり)
例えば、「Non-surprising」かつ「Wrong」というのは、「驚きも無い (すでに知っている) し、納得出来ない」ということを意味している。 ここからメッセージを作るということは、つまり「あなたがわかったと思っていることは間違っている」という内容を作ることと同義である。 更に言い換えれば、これは「相手の間違いを正す説得」であり、必要な情報量は非常に多くを要する。
終わりに
上記以外にも、「良い」グラフやチャートについての理論と実例も紹介されていたりと、スライドを作るための細かなテクニックがふんだんに盛り込まれている。
スライドを作る上で、相手の視点に立って考える=相手に必要な情報量を整理することについて、具体的な考え方とスライド作成のノウハウを学べる良い本だった。
目次
- PART1 スライド作成の基本
- 1 スライドの構成要素とレイアウト
- 2 スライドの作成手順
- 3 メッセージの3箇条
- 4 メッセージの作り方
- Column 出所の重要性
- PART2 グラフの作り方〜数値を視覚化する〜
- 5 グラフ作成における基本フォーマット
- 6 ボリュームをヴィジュアルで表す
- 7 グラフを合成する
- 8 フォーカスする
- 9 「そのもの」をフォーマットに使う
- 10 数値の動きを視覚化する
- 11 グラフ間の関係を明確化する
- 12 さらなる上級者になるためのヒント
- Column 出所の重要性
- PART3 チャートの作り方〜概念や関係構造を視覚化する〜
- 13 チャートの基本フォーマット
- 14 縦と横の軸を決める
- 15 メッセージと軸を整合させる
- 16 非冗長性のルール
- 17 矢印のルール
- 18 プレグナンツの法則
- 19 さらなる上級者になるためのヒント
- Column 出所の重要性
- PART4 シンプルなスライドに磨き上げる
- 20 Less is More
- 21 SN比を改善する1「必要・不必要」
- 22 SN比を改善する2「効率・非効率」
- 23 “Surprising yet right”
- Column 出所の重要性
- PART5 練習問題
- 練習問題1
- 練習問題2
- 練習問題3
- 練習問題4
- 練習問題5
- 練習問題6