木下是雄著『レポートの組み立て方』を読んだ。本著は、同著者が執筆した『理科系の作文技術』の姉妹篇という位置づけになっている。『理科系』は理科系の学生や社会人に向けた言語技術・作文技術の解説書で、『レポート』は文科系のそれだ。私は『理科系』で十分だと思っていたが、勤務先で本著が話題になったので、ひとまず読んでみた。
『レポート』と『理科系』の扱っているコンテンツはほとんど同じと言っていい。『レポート』は『理科系』からの引用が多数見受けられる。両書の目次を見比べると、「事実と意見」や「パラグラフ」など、同じような項目が並んでいるのが分かる。
私が本著を読んだ印象は、『理科系』のエッセンスを抽出したもの――文科系の学生や社会人にとって不要なものを省き、再編したもの――だった。『理科系』の10.3節「原著論文」や11章「学会講演の要領」などは本著に登場しない。また、例文は文科系に寄り添った文章が選ばれている。このような違いが、言語技術というテーマをいっそうくっきりさせていると思う。
しかし、理科系は『レポートの組み立て方』を読むべきか? 両書を読んだ私の意見としては、Noだ。既に『理科系』を読んでいるのなら、わざわざ本書を読む必要は無いと思う。前述の通り、内容がほぼ重複しているからだ。例えば、〈事実と意見〉の話や〈逆茂木型の文・文章〉は両方に登場する。まだどちらも読んでいないなら、自分の学習コースに合わせて選ぶのがよいと思う。
『レポートの組み立て方』目次
- レポートの役割
- レポートとは
- 大学生のレポート
- 社会人のレポート
- 事実と意見の区別
- 事実と意見――言語技術教育との出会い
- 事実とは何か 意見とは何か
- 事実の記述の比重
- ペンを執る前に
- レポート作成の手順
- 主題をきめる
- 目標規定文(主題文)
- 材料を集める
- いろいろの制約
- レポートの構成
- レポートの文章
- 読み手の立場になってみる
- 叙述の順序
- 事実の記述・意見の記述
- レポートの文章は明快・明確・簡潔に書け
- パラグラフ――説明・論述文の構成単位
- すらすら読める文・文章
- 文章の評価
- 執筆メモ
- 原稿の書き方
- 出典の示し方
- 表と図
- 読み直し 修正
(参考比較)『理科系の作文技術』目次
- 序章
- 準備作業
- 文章の組立て
- パラグラフ
- 文の構造と文章の流れ
- はっきり言い切る姿勢
- 事実と意見
- わかりやすく簡潔な表現
- 執筆メモ
- 手紙・説明書・原著論文
- 学会講演の要領